第24章 消失
目を覚ました久摘葉。起き上がり辺りを見渡すと、そこは久摘葉もよく知る屯所の一室であった。
何故新選組の羅刹が襲って来たのか、何故屯所に連れてこられたのか、そして藤堂の安否など、確認したい事は山積みとなっていた。
そんな久摘葉の元へ現れた影。
「おや、思ったよりお目覚めが早かった様ですね。流石は鬼、と言ったところでしょうか。」
「山南…さん?」
口振りからして彼が一連の事件の首謀者だと思って間違いは無いだろう。
そう思った久摘葉はすぐ様山南に詰め寄ると全ての疑問をぶつけた。
「さっきの羅刹達は一体何なのですか?私や平助君が襲われる理由って何なんです?山南さんの指示なんですか?」
「貴女には、もう少し眠って頂いていたかったのですがね。手荒な真似をせずに済んだものを。まあ、致し方ありません。どちらにせよ、私がすべき事に変わりは無いのですから。」
しかし帰ってきた返答は、何一つとして久摘葉の疑問に当てはまらなかった。それどころか、微笑とともに放たれた事は、同じ組織に与するものとは考え難い内容。
屯所を包み込む異様な空気。それは久摘葉にたった一つの判断を示した。
"逃げなくては"
脳は黄色く点滅していた。長居をしてはいけない。山南の側にいてはいけないと。
危険信号に導かれ、山南の横をすり抜け走る。
山南は特に咎めたりはしなかったものの、その表情は余裕のある怪しげな笑みであった。
その怪しげな笑みは羅刹達を呼び寄せ、久摘葉を追い詰めていった。
逃げる場所、やり過ごす場所、隠れる場所
どこをとっても羅刹兵が構えており、逃げ場など存在しない。
まるで屯所が知らない何処かへと変わってしまったかの様な異質な場と化し、何処へ向かえばいいのか見失ってしまう。