第24章 消失
表の隊士が甲府遠征の最中、久摘葉と藤堂は、土方の指示により松本のところへ行き、敗戦後の再起の下準備を進めていた。
本来ならば久摘葉は屯所待機であるが、山南率いる羅刹隊の中に置いては置けないという事での判断だった。
土方は今回の戦の勝機は薄く、険しい戦いになると踏んでいる。それでも戦自体が終わるということでもなく、次の勝機をより大きくする為、動いていた。
そして、土方より任されたもう一つの指示。
それは山南の監視。
江戸市中で多発している辻斬り。京に居た頃にも似た様な辻斬りが多発していた事から首謀者は山南なのではないかと疑っているからだった。血を求めて襲っていると。
更には、その辻斬りに奇妙な変化があったとの事。
甲府遠征の前日に、藤堂と久摘葉に伝えていた。
__________「死体が何処にも見当たらないらしい。」
「辻斬り自体が無くなったとか、そういう事でもないのか?」
「付近の住民から夜な夜な叫び声を聞いたり、血だまりを見たという声が多い。それを聞いたら、無くなったとは考えにくいだろう。」
「では、一体何のために…?」
「恐らく、証拠隠滅の為ではないかと思っている。」
「羅刹…か。」
「ああ。もし、羅刹が血を求めた結果、起こった辻斬りなら、首謀者は山南さんである可能性が高い。俺らがいない間、目を離さないでくれ。」__________
まだこれが真実だと断言は出来ない。実際に裏で何が起こっているのかはわからない。
屯所に残るからといって安全とは限らない。藤堂のいつになく真剣な眼差しを横目で切なげに見つめる久摘葉。
その不安を駆り立てるように、夜は、羅刹にとっての朝は少しずつ濃くなっていった。