• テキストサイズ

薄桜鬼 群青桜

第24章 消失


それから新選組は秋月邸に屯所を移した。

数日後、近藤が久し振りに屯所に顔を見せる。
「新選組の名で新政府軍を刺激しないよう、甲陽鎮撫隊を名乗り、甲府城周辺を治めよ。」という幕府からの命を受けた事を皆に伝えた。

「甲府城で薩長を迎え撃つ。戦に備えて、既に武器弾薬は揃い、軍資金も頂戴している。もしこの任務成功のあかつきには、我々に甲府城を下さるとのことだ。」

全員に伝え終わると、広間には幹部隊士のみが残る。

近藤の方針に納得が追いつかない者がいた。特に永倉、そして原田であった。

「新政府軍との戦いに備え、隊士を増やす。甲府城を抑えれば、幕府から増援も来るはずだ。」

それでも、土方から冷静に今後の事を聞かされ、この場は何とか収められたようだった。

「それからもう一つ。」

付け加える様に伝えられた土方の言葉は、もう一つ納得出来ない者が出る状況を作り上げた。

「今回羅刹隊は待機。屯所に篭ってろ。」

理由は言わずもがな羅刹の存在が公となることを避けるためだろう。

「何故です?我々を使えば、こちら側の優勢は目に見えているでしょう?」

いつになく、強く掴みかかる山南。
確かに羅刹は戦いの場でのみ居場所を見出せていた。
それすらも叶わないという事は、精神的に追い詰められる事も有るのだろう。

「今回は新選組だけでなく、他の兵士も大勢いる。そんな中で羅刹隊を動かすわけにはいかねえ。」

それでも土方が指示を覆す事はなかった。

「但し颯太、お前はこい。実質お前は羅刹ではない。狂っちまう事もないだろ。」

「…わかった。」

新選組の人員不足解決や兵士の強化の為、設けられた羅刹隊だったが、実践ともなれば使える場面は限られる。
それが羅刹隊なのだ。
/ 322ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp