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薄桜鬼 群青桜

第24章 消失


颯太は、早速藤堂の元へと向かった。

山南が久摘葉に変若水研究の手伝いをさせようとしている事、その久摘葉を守って欲しいという事。

そしてもう一つ。おそらく颯太にとっては一番重要な事を伝えていく。

「お前さ、この間狂ったろ?あの時はまあ、なんとかなったから良かったけど。」

藤堂も、深刻さを増した颯太の表情を見て、同様に深刻さを感じる。

「今後狂ったり、吸血衝動が現れても、久摘葉の血は絶対に呑むなよ。」

それは命令か忠告かと問えば、前者に相当する様な気迫であった。

しかし、今の藤堂にとっては自分でも思っていた事。当たり前の事とも感じられ、今更の様にも感じられる。

「それはどうしてだ?」

それでも颯太のただならない思いを感じ取ったのか、理由を尋ねると、返ってきた返答は予想以上に大きなものだった。

「久摘葉の血を呑むと、二度と吸血衝動は起こらねえだろうな。でも、結果的に羅刹以上の苦しみを味わう事になる。

鬼は人間と比べたら寿命も長い。それは西洋鬼も同様にだ。そして西洋鬼だけの特徴として、人間を完全に鬼に変える事が出来る。」

「久摘葉の血を呑むと、西洋鬼化して長い時間を生きられるって事か。でも、それがどうして羅刹以上の苦しみを生むことになるんだよ。」

「長い時間を生きるって事は、二度と人として生きられないって事なんだよ。人間とは比べ物にならない年月を生きる。歳も取りにくい。人間からしたら異形のバケモノにしか見えねえだろ?

もし、このまま俺の知る通りに時間が流れていくなら、これから先七十年以上戦争は終わらない。その時の相手は新政府軍なんかじゃない。世界だ。

羅刹となった以上、表舞台に入られるのは限度がある。戦いの場でのみ居場所を得ていたけど、その後はどうなるのか。死にたくなっても簡単には死ねない。尚且つそこには自分に害をなす者しかいない。
…それって、凄く辛いんだ。」

暫くは互いに口を開く事も出来なかった。
それだけ大きな問題だと言うことなのだろうか。

しかし互いにわかっているはずだ。末期の症状となれば、薬程度では抑えが効かない事も。

久摘葉にも同様に血は呑ませるなと伝えておくらしいが、その理由までは言わない様だ。
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