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薄桜鬼 群青桜

第24章 消失


夜には各々屯所の外に出ている事からとても静かだ。

久摘葉も1人で部屋に閉じこもっていたが、その静けさが不安を掻き立てていく。

そんな時に山南が顔を出すのは最近になって急激に頻度が上がり、久摘葉にとっての恐怖対象でしかなかったのだった。

「君も、新選組のお荷物となる事は本望ではないはず。しかし君にも新選組の為に出来ることはあります。」

山南はこのまま守り続けられるより、羅刹隊強化の手伝いをしないかと提案を持ちかけるのだった。

「君には変若水の原水である西洋鬼の血が流れているにも関わらず、狂う事なく自我を保ち続けている。
その秘密を研究すれば、或いは羅刹の狂気を永遠に抑える事も出来るやもしれません。」

久摘葉自身も丁度悩んでいた事柄であったことから、普段なら即答するような提案にも、簡単には決断仕切れなかった。

藤堂も羅刹の為、少しでも研究の助けとなるならと思う反面、狂う羅刹が増えるだけかもしれないという不安も存在しており、簡単には承諾できないものだった。

それでも、本来羅刹は戦に使うべき存在ではない。その颯太の言葉を思い出し、新たな羅刹を生み出される事を阻止するべく、決断した。

そして言い終わった後、これ以上交渉を続けられるのを阻止する為に部屋から出て行こうと。
幸い今は夜。殆どの隊士が外へ出かけている。

しかしその思いも虚しく、部屋から出る前に、決断を伝える前に山南に腕を掴まれる。

「言っておきますが、貴女に強制させる権利は私にはありませんが、良い返事を頂けるまで離す気はありませんよ。」

狂気じみた声が部屋の空気を汚染する。
細かな硝子の破片が身体中に刺さったようなピリリとした痛みが全身を走る。
掴まれた手首は思い切り締められ、手のひらにのみ血が回っていないような感覚を覚えた。

「山南さん、何やってんだよ。」

それでも、偶々近くを通りかかった颯太によってこの場を凌ぐことは出来たものの、山南の身を裂くような狂気は久摘葉の中に残っていた。

「最近山南さんの様子がおかしかったから見張ってたんだけどな…。怖い思いさせて悪かったな。
多分また山南さん来るだろうし、一人じゃ危ないから藤堂にお前の部屋来る様に言っとくから。ちゃんと守ってもらえよな。」
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