第23章 敗走
互いに抜刀しその刀を交える両者。
辺りに響く鈍い金属音が、戦いを繰り広げている事を証明付ける。
「見せかけの去勢だけはゴミ虫であろうと張れるものだ。」
戦いの最中に罵倒を浴びせる様子は、藤堂を小馬鹿にしている様にしか捉えられない。
「油断はなさらない方が良いかと。私にあしらわれた時とは違うと見えます。加勢が必要とあらば参戦しますが。」
「笑えん冗談だ。下がっていろ天霧。紛い物となったところで俺の敵ではない。」
「ここからだっての!敵になるかどうかの判断はまだ早いってんだ!」
傷を癒し、先程とは違う狂気を纏ったその背中。
羅刹。
羅刹化したことで一気に間合いを詰める藤堂。
先程とは形勢も変わり、互角の戦いを繰り広げる。
しかしそれでも真の姿を見せようとしない風間を見ると、まだ全力でもないようだ。本気となった風間は一体どれ程の力を有しているのだろうか。
「風間さん、ちょっとばかし手を止めてくれないか。」
その戦いに割って入る声。
それは真剣な一方で少しだけ軽快さが混ざった声色。
「夜真木…いや、今は十鬼夜と呼ぶべきか。いったい何の用向きだ。」
それは颯太だった。ゆっくりと近付いて来ており、側にはもう一人の影が。
「交渉に来たんだよ。久摘葉についての、な。」
「我ら鬼一族を見限った貴様と相手など出来るものか。」
「俺がじゃねえよ。」
颯太の言葉に導かれ、風間の前に佇む姿。
「初めまして。風間家の頭領さん。」