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薄桜鬼 群青桜

第23章 敗走


新型兵器を装備した敵兵が闊歩する中、藤堂と久摘葉は見つからない様に暗い夜の森を進んでいく。

しかし、ただでさえ暗い夜道に加え、辺りは木々で月明かりも遮られている。視界も足場も悪い。狙われにくい事を思えばなんとか割り切れたものの、焦りと不安の色ははっきりとしていた。

「大丈夫か?歩きにくいけど新政府軍に見つかる訳にもいかねえし、合流するまでの辛抱だから、しばらく耐えてくれよな。」

そんな中だからこそ、不安を抱える久摘葉に対して藤堂は時折後ろを振り向きながら久摘葉の様子を伺い、励ましては何度も手を引いた。

そんな気遣いに感謝しながらも救いきれない不安は久摘葉自身が割り切るほかなかった。

道中、久摘葉はふと思い出したような違和感を覚える。

先程藤堂が狂った際、首元に当てられた刃。
颯太が駆けつけ、助けてくれた事で、大事には至らなかったものの、その刃は確かに久摘葉に傷を負わせた。

しかしその傷の感覚が全くなかったのだ。
痛みがあってもおかしくないというのに。

藤堂が前で道を切り開く中、久摘葉は斬られたであろう首元をそっと指で撫でる。
痛みどころか、傷すらも見つからなかった。

指でさすってみても、乾いた血のザラついた感触だけが残るだけであった。

自身が鬼だという事も、今の久摘葉は知らない。
自分は人間だと信じて、疑う事すら知らない。

人間でありながらこんなにも早く完治することなどあり得るのだろうか。

もし、あり得るのだとしたらそれが示す事とは。

「平助君。」

このままではいられないとばかりに藤堂にその可能性の有無を訪ねる。

「もしかして私って、前変若水を飲んだのかな?」
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