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薄桜鬼 群青桜

第22章 羅刹


知らない藤堂の姿に恐怖だけがこみ上げる。

藤堂が変若水を飲んでいた事をここで知り、その姿をここで目の当たりにする。
そんな事は望んではいなかった。

敵はあらかた片付けたものの、藤堂は壊れていた。変若水により、精神が普段のものから一変し、その姿は悪鬼と呼ぶに相応しいものだった。

「まだ残ってんな、敵。」

なのに藤堂は笑っている。怪しい笑みを浮かべて、さらなる血を求めて動き出す。

久摘葉は怖くて、ただその姿を見つめる事しか出来なかった。
見間違いであるはずがない。

白髪赤目の化け物に
完全に羅刹へと姿を変えた藤堂。

次の血を求めてゆらゆらと彷徨う。

「誰…?」

それが藤堂なのだと信じたくはなかった。
藤堂に悪い何かが取り憑いたのだと思っていたかった。

でもその姿はよく見慣れた藤堂の面影を残している。

「平助君、戻って来てよ。」

涙交じりの声は闇夜に掻き消された。

視界に入る全ての敵を斬り伏せるも、まだ足りないとばかりに当たりを見渡す藤堂。

久摘葉は怖くて堪らなかった。藤堂がもうあの笑顔を見せてはくれないのではないかと。望まない未来を想像してしまう。

そして、辺りを見渡していた藤堂の視界に入ったのは久摘葉ただ一人だった。
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