第21章 鮮血
その後駆け付けた颯太と協力して沖田と久摘葉を奉行所に運んだ。
先ほど沖田から摘出された銃弾は銀であり、その為に治癒が遅れていたのだと。
また久摘葉はすぐ目を覚ましたものの、当時の記憶が混濁している様だった。
久摘葉は自分がこの場に残ると決めたのはどういう事なのかという事を改めて実感したのだ。
敵から逃げ続けることや、流れる血に耐えなければいけない。
一方藤堂は颯太にこの事を伝える。
「誰かを思いやる心は元々久摘葉のものだから。方法がわからなくてもその思いから無意識の中で本能的に。」
久摘葉の記憶が欠けていても、取り巻く環境は何も変わっていない。問題も、何も解決していなかった。
久摘葉を殺さない為に治癒をさせない。
自身を忘れた事で解決されたと思い込んでいたがそれは大きな間違いだったのだ。
それに加え、久摘葉自身も記憶を取り戻そうと奮闘している。記憶が戻らない様に接する事は余りにも大変な事なのだと今回の一件で嫌という程思い知らされた。
他者の治癒をする事で久摘葉の体が蝕まれていくことには以前同様変わる事はない。
無意識化で行われるなら尚更、より一層警戒しておく必要がある。
藤堂も颯太も、決意を新たに固めたのだった。
その後近藤と沖田は松本先生の診療を受けるべく大阪城へ運ばれた。
世に言う鳥羽伏見の戦いの戦いが勃発する数日前の事だった。それを知る者は、今となっては颯太だけだったが。
新選組を追い詰める存在は四方からやってくる。
今は個々の警戒心を強める他対策は立てようがなかった。