第21章 鮮血
「沖田さん!」
久摘葉は血相を変え、沖田に近付く。藤堂もまた驚きを隠せない様子で近付く。
「総司、お前変若水を飲んでたのか。」
沖田の羅刹の姿を見るのは久摘葉も藤堂も初めてだ。突然の出来事に動揺を隠せない。
しかし同時に不信感に見舞われる。羅刹となりながら銃弾1発で倒れる事はまずあり得ないだろう。
なのに沖田は依然として苦しんでおり、傷口は塞がる様子もなく、出血すら収まらずにいる。
「どうして。どうして互いを傷つけ合うの?命は儚いものなのに。たったひとつしかない大切な…。なのに。」
何故なのか疑心暗鬼に満ちる中、久摘葉はただ泣きじゃくって沖田の側にへたり込む。
「沖田さん…、沖田さん…。」
久摘葉は静かに涙を流しながら、何度も名前を呼び続ける。
流れる涙は、沖田の肌にこびりついた血を流していく。
「久摘葉、急いで総司を治療してもらおう。早く戻るんだ。」
藤堂が大切な言葉を発しているのに、それは久摘葉の耳には入らない。それだけ混乱し、悲しんでいるということなのだろうか。
そしてこの後の出来事を藤堂は信じたくなかった。
久摘葉の悲しみに答えるように傷口から銃弾が摘出される。
傷も歪に蠢いていた。久摘葉が無意識に治癒を開始したのだと、すぐにわかった。
藤堂ははすぐ様久摘葉の肩を持って揺らす。
「千月!止めろ!」
前科から、止めなければという使命感を感じ気付いたらそうしていた。
久摘葉はそのまま地面に倒れ、藤堂は事の深刻さに頭を悩ませるのだった。