第21章 鮮血
沖田は誰にも知られたくなかった。自分が羅刹となった事を。
だから敢えて病に苦しみ続ける振りをした。
しかしそれももう終わりだ。尊敬する近藤を撃った敵に死を与える事。
沖田は新選組の羅刹として、刀を握ったのだ。
その時、沖田にとっては絶好の機会が訪れる。
奉行所の付近で銃声を響かせる愚かな者達。
近藤を撃った者達と断定は出来ないが敵意がある事は事実。
鋭い眼差しで走って行った。
進む方角には久摘葉。久摘葉はすぐさま沖田を止めにかかる。
「沖田さん⁉︎何処へ行くんですか!駄目です。そんな体で
「止めるなら殺すよ。」
しかし沖田は、相手が久摘葉だとわかっていても、殺気ある声色を響かせた。
一体沖田に何があったのか、久摘葉は突然の出来事にまた混乱してしまう。
先ほどの優しい沖田は何処へ行ったのか。
丁度夜の巡察に出ようとする藤堂の姿を目撃すると、すぐさま駆け寄り助けを求める。
「沖田さんが、今外に走って行って…!」
挑発の銃声を響かせた浪士達を発見した沖田。
敵に静かに近付くと、浪士達は嘲笑い、銃弾を打ち込んだ。
しかし羅刹と化した今の沖田にそんなものは通用しない。
その人間ならざる姿に驚きを隠せない浪士達。
「近藤さんを撃ったのは君達?」
そう聞く沖田だが、その回答を口にしない浪士達。近藤の敵だと認識するには十分過ぎる回答だった。
狂気に満ちた瞳で残酷に斬り伏せていく。
時には何度も心臓を抉り、辺りには卑劣な叫び声だけがこだまする。
まさに羅刹と言うべき姿。
そこへ沖田が一番斬りたかった人物が。南雲が姿を現し、静かな殺気だけが満ち溢れていた。