第21章 鮮血
その沖田を見て南雲は懐から変若水を取り出し、沖田の布団目掛けて投げる。
「それを飲めば病の苦しみから逃れる事が出来ます。」
柔らかい布団の上で怪しく輝く紅い小瓶。
南雲の大太刀は羅刹に弾かれ、いよいよ命の危険も覚える。
布団の上で死ぬ。違う。
沖田は戦場で果てる事を願った。
その結果、羅刹は沖田により一掃された。
「ありがとうございます。
こうなってくれる事を信じてました。本当にありがたい事です。
これで千鶴はちゃんと苦しみを知る。」
最後の羅刹を斬ると同時に嘲笑する南雲。
全ては仕組まれた罠だったのだ。
わざと羅刹に押されている振りをし、沖田が変若水を呑むよう煽った。
「千鶴は桜時の部屋に縛り付けてあるよ。羅刹に襲われてるってのは事実だから。
あ、でも安心して。襲ってる羅刹は新選組の出来損ないとは違う。ちゃんと理性のある利口な羅刹だから。
殺すなって言ってあるし。甚振ってやれ、とは言い聞かせてあるけどね。」
嘲笑う南雲。
事が順調に進んだ事で喜んでいる。
その姿が気に食わない沖田は南雲目掛けて刀を振り下ろす。
「俺を殺る前に千鶴はいいの?今頃、可愛い悲鳴をあげてると思うけどな。
計画とはいえ、その姿を見れなかったのは残念だったなぁ。」
しかしそれはすんでのところで南雲の言葉に止められる。
「次会った時、殺すよ。」
それが、羅刹になって最初に発した言葉だった。
その後、腕を柱に縛り付けられた雪村の姿を発見した。
羅刹は既に撤収していた様で何処にも居なかったが、雪村の足元には血痕が残り、頰には涙が一滴伝っていた。