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薄桜鬼 群青桜

第21章 鮮血


それは沖田の部屋だった。
布団から上体を起こしてやんわりと微笑んでいる。

「酷い顔だね。どうしたの?」

沖田にも、久摘葉に起こった事の経緯は行き届いていた。
最初こそ動揺していたものの、久摘葉のその変わった姿を見て理解が一致出来たようだ。

しかし等の本人は不安続きの中でようやく安堵する事が出来た。
調子の良さそうな沖田。優しい言葉を受け、今までなんとか耐えてきたものがここに来て切れた様だ。

力なくへたり込むとボロボロと大粒の涙が着物に跡を残す。

声を殺して、目の前の沖田以外の誰にも気付かれないように。

今久摘葉が抱えているものが普通ではないとわかった沖田は、彼女が落ち着くまで待った。

そして何があったのか聞き出したのだ。
沖田にとって強い衝撃を受ける事実を。

「…颯太君を呼んできてもらえるかな?

聞きたいことがあるんだ_______」


颯太がやって来ると久摘葉を部屋から追い出した。
彼女に見られたくない姿を晒す事になるだろうと自分でも自覚があったから。

「何があったのか、全部教えてもらえるかな。」

先ほどの久摘葉の前で見せた姿とは全く別物の姿。
殺気に満ち溢れた声色で颯太に問いただす。

「竹田街道で近藤さんが右肩を撃たれた。処置は終わった。今夜が峠だと。」

「僕が聞きたいのはそんな事じゃない。誰がやったんだ。」

先ほどの威圧感がさらに増し、ビリビリと痺れるような空気が辺りを包む。
沖田にとって近藤とはそれ程大きな存在であるのだ。必死な様子が殺気となって颯太を襲う。

「俺が知ってるのはあくまで俺の世界の歴史だ。ここの事実と言えるほど確実なもんじゃ

「御託はいいからさっさと吐いてよ。」

痺れを切らした沖田が今すぐにでも噛みつかんとばかりに言う。

今までの飢えた狼の様な存在とはまた違う。
姿の見えない斬るべき相手を特定する為に。

その沖田を見て、自分と同じ何かを感じた颯太は、自身の知る首謀者の存在を教えた。

「御陵衛士の残党が、油小路の変の時の報復の為にやった。俺が知ってるのはこれだけだ。」

沖田は「わかった。」と一言呟くと颯太を追い出した。

颯太は部屋の外で、沖田がこれから何をしようとするのか、想像していた。
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