第21章 鮮血
久摘葉は今までとは似ても似つかない様な待遇に置かれた。
それは外観を見るだけでも以前との違いははっきりしている。
白を基調とした中に紅色を中心とした花々が咲く小袖。
薄紫の帯に淡い黄色の帯締め。
白桃色の肩掛け。
長く艶やかな黒髪は横流しに。
以前は男としてここにいたことがまるで嘘の様だった。おしとやかで静かな振る舞い方はまさしく女そのものだった。
また、千月は隊士達の大半には油小路で戦死したと伝えられた。
悲しむ者も居たと聞くが、そこまでの存在だったのかは、今の久摘葉には知る由もない。
久摘葉の存在を知るのはごくほんの一部だけだ。誰にも存在を知られない様一番端の小さな部屋に匿われた。勝手な移動も禁止だ。
しかし孤独というわけでもなく、度々幹部達が顔を見せ、話をしてくれたりしていた甲斐あって、久摘葉は抵抗もしなかった。
久摘葉は一人懐にしまったあるものを取り出しじっと見つめた。
それは簪だった。
最初にこの世界へ飛ばされた時身につけていた群青色の桜の簪。当然久摘葉はこの簪の意味など知らないが、颯太に言われたのだ。
「この簪は久摘葉自身を守る唯一の手立て。」だと。
鬼に襲われた時に見せつけろと言われたものの、それ以上は何も聞かされなかった為、特に何もない時は身に付ける事もなくただしまっている。
そもそもどうして女である自分がここにいるのか。それすらもわからないが、今はただ身を縮めて隠れていることしか出来なかった。