第20章 零
そして夜真木自身が今後取るべき行動、それも本人の中で固いものとなった。
「俺を新選組に入れてくれないか。」
理由は言わずとも、ここまでの話の中で十分伝わっているだろう。彼がどれほど久摘葉をしたい、守りたいと願うのか。
「しかし…平助に似ているということもあるしなぁ。隊士達も混乱するだろう。」
近藤さんはそう言う。
確かに藤堂も復帰が確定したわけではない。仮に復帰したとなれば、斎藤のように陰口を叩かれるのは目に見えている。
そんな時、提案が上がったのだ。
「だったら羅刹隊に入れ。」
提案したのは土方だ。
藤堂と似ている点から、公に入隊しては隊の調和が乱れる。
また、鬼である為に、羅刹以上の力を持っている。
これが最良の方法だと、夜真木自身も信じるしかなかった。
颯太の羅刹隊入隊が決まり、残るは千月の今後についてだ。
「久摘葉は、女として置いてくれないか?戦いからも遠ざけて欲しい。」
それはやはり元の世界の事を思い出すのを防ぐ為だろう。何がきっかけで戻るかもわからない。
「あいつはもう、桜時千月じゃない。それを理解してくれ。」
それは新選組も皆もまた受け入れなくてはいけないのだ。
千月、いや久摘葉が、ただのか弱い少女となってしまった事を。
全ての話もひと段落し、一時解散となる。
しかし藤堂は、再入隊の決断も曖昧なままとなってしまった。
今となっては外部の人間である藤堂も、いい加減決断しなければいけない事は分かっているだろう。
分かっていても、千月の事が頭の中を過る。
思考は乱されるばかりだった。