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薄桜鬼 群青桜

第20章 零


千月は眠り続けていた。

油小路の変からもう何日目なのだろう。

未だ微動だにせず、目覚める気配も一向になく。
肌は青白く、寝息も薄くて聞こえない。

彼女をこうしてしまったのは自分だとひたすら攻め続ける藤堂は、新選組にこそ戻ってきたものの、隊士として再入隊する事はまだなく、毎日付きっ切りで様子を見ており、ただその瞳が動く事を祈っていた。

他の隊士達も彼女を心配し、時々顔を見せるも、その期待も虚しく散るばかり。

ただ夜真木だけは油小路以降彼女の側に近付く事は全くなく、平隊士に姿を見られぬよう新選組の中にいた。

彼女はこのまま死に向けゆっくり進んでいるのではないか。誰も口にこそしないものの、それは全員が感じているのではないか。

「お前はどうしてオレを助けたんだ。自分の身を犠牲にしてまで。」

冷たい風と共に千月の頬を撫でていく疑問。
藤堂は知りたいのだ。どうして自分をそこまで救おうとするのか。
女である千月が、そこまでこだわる理由は何か。

でも彼女が答えてくれる事はない。

今もただ横たわり、意識は知らない場所を彷徨っている。


それからまた日は過ぎ去った。
危篤状態が続く中、それでも傍で目覚める事だけを信じている藤堂の姿がやはりあった。

日に日に彼女への対応にも力がこもる。
焦りが、藤堂の思考を乱す。
千月に今何が必要なのか、どう待てばいいのか。
今まで普通に出来ていたことが出来なくなる。

千月のやつれた手を握る手にも、自然と力が入ってしまう。
強く握ってしまえば壊れてしまいそうなぐらい脆い手に、触れられなくなった。

手だけではない。日に日に悪化する千月の症状を見ているのだ。自分が良かれと思って触れた途端に壊れた、なんて事にはしたくないのだ。

それでも何もしなければ、このまま死を待つのみだ。
千月を蝕む何かを取り除かなければ。
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