第19章 【外伝】千月
「聖祭、か。」
鬼にとって悪である人間を葬る事で、荒れてしまった鬼達の聖を取り戻すためのもの。
それは残された鬼達が強く願ったものだ。みんな人間がいなくなることを望んでいる。だから祭り。
ただの人殺しの仕事にまでそんな正統じみた理由を付けては千月に強制させる。
「あの時から覚悟は決めてた。でも命を奪う行為はやっぱりどう考えても卑劣だと思うし、本音を言えばこんな事したくない。」
人を殺した直後、千月は決まって辛そうにする。
「でも、私に失敗は許されない。お母様の命令を遂行し続けるには私も生きるしかない。だから八瀬姫に従うというのも私の本望だ。」
殺したくないけど殺す。
千月の矛盾した思考、本当の意味では俺には到底理解できない。
「すまない。そしてありがとう。名も知らない人。」
殺した人にお礼を言うのは千月が自主的に行っているものだ。
結果的に命を分けてもらっているようなものだからって。
千月はすげえよ。
そうやって自分の目的も失わずにさ。
千月のを継いでから、こいつは後ろを振り返る事なく進み続けてる。
でも、聖祭を繰り返すたび、久摘葉の感情が入り混じって聞こえるのは気のせいなのか。
久摘葉の人格は死に切れてない気がするのは気のせいなのか。