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薄桜鬼 群青桜

第19章 【外伝】千月


「颯太君、私…私は…。」

「久摘葉…」

刀を捨てた久摘葉は自分の手のひらを見つめながら震えていた。
俺は名前を呼んでやるのが精一杯だった。
何もかけてやる言葉が見つからなかったんだ。

「これ全部、私がやったんだよね。」

「私はお母様を殺した奴を殺したんだよね。」

「…でもお母様は…死んだんだよね。」

途切れ途切れにこれまで起こったことを口にして整理している。

そして久摘葉は泣いた。
地面に吸いつけられるように座り込んで、へばりつくように泣いていた。
大地に還った母さんに注がれている様だった。

そして顔を上げた久摘葉の顔は涙でぐしゃぐしゃだったけど、鋭い眼差しで燃えかすを見据えていた。

「私の無知が大切な人を殺した。私の弱さが大勢を殺した。

もう何も失いたくない。

私、お母様の意思を継ぐ。お母様に教えてもらったこと全部、私が代わりに果たして見せる。

久摘葉はここで死んだ。
私は千月。十鬼夜家当主、十鬼夜千月。」

その日から久摘葉は性格も一変させて、当主としての頭角を現していた。

その宣言を最初に聞いた者として、兄として、俺もこの日を境に久摘葉を千月と呼ぶようになった。
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