• テキストサイズ

薄桜鬼 群青桜

第19章 【外伝】千月


久摘葉はたった一人信じられる肉親を失って、怒りで我を忘れてしまった。

右目に東洋鬼の金、左目に西洋鬼の赤。
白銀の艶やかな髪が熱風に揺れ、額には一角の角が。

久摘葉の鬼の力が覚醒した時だった。

そっからの久摘葉は悪鬼と成り果てた。
目につく奴全てを殺して。いや、殺すだけに飽き足らず、体を細かく切り刻んで、もはや原型を留めているものはいなかった。

俺はその場に落ちている武器という武器をかき集め、久摘葉を止める為だけに戦った。でも駄目だった。心臓を突かれちまった。

それでも倒れた俺を見て久摘葉は元の姿に戻ってくれたから、せめてもの救いだと思った。

「ごめんなさい。ごめんなさい颯太君!お母様と約束したのに。颯太君を守ってって、頼まれたのに。」

意識が薄れていく中で久摘葉の懺悔の言葉が身に注がれた。
手を強く握られ、ポタポタと久摘葉の涙が体に染みる。

これが最後の感覚だと思っていたのに。

驚いた。俺は死ななかった。
貫かれたはずの心臓が正常に機能している。

鬼の治癒力であっても心臓までは治らないはずなのに。
久摘葉も驚いた様子だった。

久摘葉が他者を治癒する力を得た時だった。
/ 322ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp