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薄桜鬼 群青桜

第19章 【外伝】千月


舞い上がる火の粉、つん裂く叫び声。
目の前の現実を受け入れるとか無理だ。それ以前の問題だ。

その時が来たって事だ。

「どうして!まだお母様が中にいるのに!」

「この場所が人間にバレたのです。事は一刻を争います。逃げ遅れてしまった千月様ご本人が悪いのです。」

母さんから話は聞いてた。久摘葉に教える事はもう無いって。
それは母さんに与えられた命の猶予が無くなってしまったと言うことだ。

助けられない自分が憎かった。
事実を知りながら何も出来なかった自分が憎かった。

母さんが死ぬ事が辛い。でも俺には苦しむ資格が無い。
きっと今日初めてその事実を知った久摘葉の方が辛いに決まってんだ。
それに俺は、母さんに与えられた時間が過ぎるのを悔やみながら眺めてただけなんだ。

俺が産まれなければ、母さんも、顔も知らない父さんもバレずに、死なずに済んだかもしれない。

俺が産まれなければ、今久摘葉が傷つかなくて済んだかもしれない。

俺は場違いで産まれてしまった存在なんだ。

だから俺は、一生自分を憎みながら生きてく。


「お前ら、絶対許さない。何が一刻を争うだ。身内を殺してさも当然の様な顔して、ふざけないで!お母様を!お母様を返せ!!」

俺は自分で親を殺した。その罪滅ぼしを一生をかけてするよ。

「出来ないなら、お前らも死ね!!」

母さん、まずは久摘葉を止めるよ。
怒り狂った久摘葉を。
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