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薄桜鬼 群青桜

第18章 懇願


「はぁ…。はぁ…。はぁ…。」

死体が積み上がったこの場所。
その中央に立つ私はまさしくバケモノで。
それでも私の中にはちゃんと理性は残っていて。

血に汚れた刀を捨て、平助の元へ走る。

息も薄い。早く。早くしないと。

平助の側に座り、両手を組んで力を込める。

その傷の深さに、私に帰ってくる痛みも相当のものだった。

でもこれで助かるなら願っても無い。

私は平助の事を過保護に守り過ぎていたのだろうか。男の面目というものを壊してしまっていたのだろうか。

それだけ必死だった。

「千月、止めてくれ!お前だってもう危ないのに!」

颯太の声が聞こえる。

でも私は止める気なんてない。

「千月!頼むから止めてくれよ!」

完全に治るまで、止める気なんてない。

「っ!傷が癒えた⁉︎」

「本当だったのか。だったら千月ちゃんももう不味いんじゃねえのか?」

原田さんの驚く声、永倉さんの不安。
ここにいない新選組の人達にも、ずっとお世話になって、迷惑もかけて。

私の居場所。楽しかった時間。
あんなに帰りたがっていたのに、今はここを離れる事が惜しくて堪らない。

「もういい。全部癒えた!だからもう止めてくれ!

"久摘葉"!!」

ハッと目が覚めた。
その名を聞いた瞬間、私から鬼の力が消えていくのがわかった。

呼び戻されちゃったのかな。
でもこれで助かったはず。

「へい…す…け…くん」
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