第18章 懇願
血生臭い匂いが充満する。
先ほど屯所で感じたものよりずっと濃いその匂いは兵力も犠牲も何もかもが桁違いなのだと教えてくれる。
御陵衛士は既に壊滅状態。
新選組も所々に犠牲者が倒れている。
この殺伐とした雰囲気を作り上げたのは御陵衛士でも新選組でもない。
薩摩の介入。
その兵力は絶大で、新選組も防戦を続けるほかなかった。
絶望的な状況の中、私は平助の姿を探す。
しかし薩摩藩士が大半を占める中で、平助ただ一人を見つけ出すのは困難を極める。
抜刀し、なんとか藩士の攻撃を掻い潜りながら平助を探す。
ようやく見つけた平助は原田さん、永倉さんと共に藩士と刀を交えていた。
和解出来て何よりだという安堵と共に押し寄せた不安。
藩士に囲まれた平助。
四方を塞がれ逃げ道のない状況。このままでは平助は。
なんとか逃げ道を作ろうと平助を囲う藩士に斬り込もうと足を踏み出すも、それを邪魔をする発作。
斬り込むどころか矛先すら震える。
そして重大な欠点がもう一つ。
「多少傷物になってでも回収しろとの命ですので。」
加戦と発作を気にし過ぎて、背後から近づく殺気に気付かなかった。