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薄桜鬼 群青桜

第18章 懇願


少女は失った。

目の前で大切な人がゆっくり殺されるところに居合わせた。

溢れる涙を地面に溜めて。
目の前で消えゆくその人の記憶が、涙と共に流れ落ちている様だった。

悲しみは憎しみへ変わった。


少女は考えた。

何がこの状況を生み出したのか。

死の間際に立ち会っているにもかかわらず悠然と笑う者達。
こいつらも大地に還ればいいのだと、何の迷いもなく思った。


少女は____した。

その最中に何も思う事は無かった。
この行為をするに当たって、戸惑いなど何一つ持ち合わせてはいなかった。

あまりにも呆気なく地面に伏せていく哀れな者たち。

でもその中に、___してはいけない者がいた。


少女はまた涙した。

また大切なものを失った。

今度は自分の手で。醜い醜い自分の手でその生を奪った。

その名を叫び続けた。

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そして現在少女は、その女鬼は、
失う事を恐れて、息切れも、腹部の痛みも、発作でさえ気に留める気配を見せず、ただひたすら走った。
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