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薄桜鬼 群青桜

第17章 波


「どういうつもりだ。」

「私も夜真木さんから相談を受けた鬼です。貴女が当時より弱体化してしまっていることも知っている。
護りたい人がいるんでしょう?だったら差し上げます。これを飲めば再び力を得られる事は貴女もわかっているはず。」

確かに南雲の言っていることは真実だ。
これを飲めば、私は確実に救うことが出来る。
騒ぎに乗じれば屯所を出ることもさほど難しくはないだろう。
もう油小路は戦場と化しているだろうから、迷っている余裕はない。

それでも羅刹になる事に戸惑う自分もいた。

「そのままでも貴女は確かに強い。でも発作に屈する今の貴女は誰よりも弱い。弱さに勝つには変若水を飲むのが一番手っ取り早いんじゃない?」

どうしてもすぐには判断を下す事が出来ず、変若水を懐へ入れる。
こんな薬に頼ってしまうかもしれない自分に腹が立つ。でも二度と大切なものを失わない為には、必要な事なのかもしれない。

「判断は持ち越しかぁ。まあいいや。早く行きなよ。急いでるんでしょ?」

態度を急変させた南雲。

「ああ、見張りの子が止めないか心配なんだね。」

「いっ…ぅ…ぅ……」

初めて会った頃にも、先ほどまでも見せなかった残虐な一面を見せつける。
雪村さんの左手首を掴んでねじ上げる。

「南雲…!」

「ほら、これでいいでしょ?早く行きなよ。大切な人が死んじゃうけどいいの?」

「っ…!」

「俺が可愛い妹を傷付けるような事するはずないだろ?安心しなって。」

ごめんなさい。雪村さん。
傷付けられる彼女を前にしても私は平助を助けに行こうとする。

苦痛に耐える雪村さんと、嘲笑う南雲に視線を向けられながら、私は油小路に向け走って行った。
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