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薄桜鬼 群青桜

第17章 波


「私も実行隊に同行させてください。」

もしこれが土方さんの意図的な判断なのであればどうしても納得できない。

「僕も名前呼んでもらえなかったんですけど。」

沖田も私に続けて土方さんに詰め寄る。

「総司、お前は寝てろ。今は一刻も早く本調子に戻る事だけに集中しろ。」

「恨みますよ、土方さん。」

あたかも土方さんの耳に私の声は届いていないような、私に対する返答すらなかった。

幹部達も既に退散し、広間には私と土方さんのみとなる。
私はもう一度問いかける。

「どうして実行隊の中に私の名が入っていないのですか。」

若干怒り混じりのその声に、土方さんはいつもの冷たい視線を私に向けるだけだった。

「土方さん!」

「理由はお前が一番わかってんじゃねえのか。」

名前を怒鳴って呼ぶことで、ようやく返された言葉も、そんな素っ気ないものだった。

わかっている。確かにわかっている。外された理由は大方予想はついている。

でも、ここで全てが無に帰すとなれば、簡単に引き下がることなんてできない。

「土方さんだって、私がどうしてこんなに志願しているか、わかっているではありませんか!」

ましてや、土方さんには全てを話しているんだ。
こちらの目的も知りながら、全て無駄と終わらせようとするなんて、あまりに酷い。

土方さんも1度全て言っておくべきだと踏んだのか、大きく溜息を吐き、私に淡々と話し始めた。

「確かにお前がしたい事も、俺は知っている。だがな、死ぬとわかった隊士を戦場に駆り立てる指揮官が何処にいるってんだ。」

「まだ私が死ぬと決まった訳では

「死にに行くようなもんだろ。お前はその力の代償とやらで満足に戦う事も出来やしねえ。」

「だからと言って見殺しになんて

「だったらこの間みてえに血に狂って暴れるつもりか?敵味方の区別も出来ない状態のお前自身が殺しちまう可能性だってあるんだぞ。」

その言葉に何も言い返せなかった。
私が平助を殺す。
認めたくはないが、その可能性だってあるのは事実。

口を噤むしかできない自分が腹立たしい。

「平助を…助けたかったのに…」

必死に絞り出した声は掠れて、涙で濁っていた。
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