第17章 波
「差し迫った問題は二つ。一つは幕府の信用失墜の為に羅刹隊の存在を公に晒すつもりらしい。
そしてもう一つは、近藤さんの暗殺。」
斎藤さんから発せられる目論みの数々に一同は険しく表情を歪める他なかった。
以前より警戒はしていたものの、いざ目の前に事実として並べられると、やはり驚きはあるのだろう。
そして私も、やはり起こりゆる事件なのかと苦痛な表情を浮かべるほかなかった。
「伊東さんには、死んでもらうしかねえな。」
土方さんより伝えられる事はその夜襲方法だ。
伊東さんを接待し、酒を入れて判断力を鈍らせる。
帰り道に待ち伏せていた隊士達がその首を討ち取る。
伊東の亡骸で残りの御陵衛士をおびき寄せ、またこれも排除。
新選組と御陵衛士。
本来なら目的同じくして活動している同胞のはずが、いつの間にかこんな汚らしい内部抗争を起こすとは。
これこそ風間が人間を蔑む要因であるのだろうな。
この事件は私にとっても重要なものだ。
平助が生きるか死ぬかはここにかかっている。
真剣に、ただ近藤さんや土方さんから発せられる言葉を一言たりとも逃すまいと、聴覚だけに神経を注ぎ込んでいた。
「接待は俺と近藤さん、実行隊は原田、永倉、他非番の隊士を数名募ってくれ。他のものは屯所待機。屯所の警護は任せた。」
だからこそ理解が遅かったのだ。
それはあまりに突然で。
土方さんより伝えられる役割。
実行隊、即ち油小路で戦闘する者たちの中に私の名前はなかった。