第17章 波
「坂本が斬られただと?」
永倉さんの驚愕の声。
時代の立役者であった坂本龍馬が暗殺されたという。
「そういえば、坂本が斬られたところに原田君の鞘が落ちていたらしいね。」
井上さんも持っている情報を提供する。
「なんだ。左之さんが坂本龍馬を斬ったんだ。いいなー。僕も呼んで欲しかったな。」
「馬鹿。俺の鞘はここにあるだろうが。つか総司、お前寝てなくていいのかよ。」
「やだな。ずっと横になってたら寝たきりになっちゃいますよ。」
「なんにしてもだ、新選組のせいにしたい奴がいるって事だな。」
その晩、幹部達が集められ、会合が開かれた。
まずは斎藤さん、そして私の事について。
「本日付けで斎藤は新選組に復帰する。」
「俺は副長の命を受け、間者として伊東派に潜伏していた。」
土方さんに続いて皆に説明する斎藤さん。
その事情を聞き、皆安堵している様でもあり、同時に私を警戒しているようにも捉えられた。
「じゃ、ついでに聞くが千月、お前は伊東派の間者じゃねえのか?」
原田さんがすかさず問いかける。
「確かに私は伊東派の間者。でもそれは伊東派の情報を新選組に提供する為のもの。二重に間者をしていたんだ。」
私達の間者の件は極秘であったために、この事を知るのは近藤さん、土方さん、山崎さんのみであった。
しかしその事実を知った今、おそらくここにいる全員が気付いているはずだ。
今まで間者だった私達がこの局面で戻って来た意味。
伊東派が何か目論んでいるということを。