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薄桜鬼 群青桜

第17章 波


「貴藩が後ろ盾になってくださるとあれば、我々も思い切った行動が出来るというものです。」

「勤皇の為ならいくらでも力を貸しますんで。」

「頼もしいお言葉ですこと。…本気にしますよ?」

所は九州大宰府
薩摩との密会。護衛として伊東さんに同行していた。

「そういえば、是非貴方方のお耳に入れたい情報が。」

「ほう。それはなんですと?」

「実は新選組で化け物を見た、という隊士がいましてね、ちょっと調べてみたのですけど…」

伊東は新選組に対してあからさまな敵対行動を取っている。
今話そうとしているのも変若水、羅刹の事だ。

この話は本来なら他言無用の重要事項。
みすみす聞き逃すわけにはいかない。

でも今はそれが出来ない。下手に新選組を庇っては、二重に間者をしている意味がない。
悠々と話す伊東の言葉を遮りたい。その思いはぐっと胸の内に留めた。

「この話が本当なら、新選組を鎮めるいいきっかけになりますわ。
新選組は大きくなり過ぎました。障害になる前に潰しておかなければ…ね。」

その怪しげな笑みを最後に、私はその部屋から離れた。


外では颯太、そして風間が同じく護衛の任を受け、ここに来ていた。

「千月、やっぱり油小路の変は起こりそうだな。あれじゃ近藤暗殺計画も立て始めてるに違いない。」

「ああ。だから私はここまで伊東派に乗り込んで動いてきたんだ。大切なものは自分の手で守る。もう二度と失わない為に、例え汚い手法だとしても手段を選んではいられないんだ。」

もう何度も口にしている守るという言葉。
その言葉の重さは私だって理解している。
どれほど大変で辛いものなのかもわかっているつもりだ。

「風間さん、今日は攫って行かねえの?」

「今日は藩命に従って来たまでだ。それに千月には先日言ってある。今は弁解の余地を与えてやっているだけに過ぎん。」

今は、という事はまた近いうちに討ち入りに来るつもりなのだろうか。

なんにせよ、今は警戒せずとも良いのだろう。
私は静かに、遠くから聞こえる伊東の嘲笑に耳を傾けていた。
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