第17章 波
どんな事があったとしても、朝はやってくる。
昨晩は真実を知り、襲撃もあった。
皆の表情も険しく歪んでいる。
私も狂ってしまったのだ。皆に見せる顔などなかった。
それでもすべき事に変わりはなく、出来るだけ人目に付かない様に生活している。
「島田君の様子はどうだい?」
井上さんの声、内容はまさしく昨晩の事だ。
島田さんにも申し訳が立たない。
「打ち所が悪く気絶した様ですが、怪我は大した事はありません。隊務に支障が出ることもないでしょう。」
山崎さんの返答に安堵する。
大した怪我でないのであればなによりだ。
そこにやってきたのはやはり険しい表情の近藤さん。
「西本願寺から、これ以上新選組がここにいるのは困ると言ってきた。」
屯所移転の件だ。
やはりこれも昨晩の騒ぎが原因らしい。
元々薩長に協力的だった西本願寺に無理矢理押し入ったのだから、騒ぎが起これば追い出したくなるのも無理はない。
私はいてもたっても入られず皆さんの前に姿を現した。
「桜時君か。身体の具合はどうだね。」
思いがけない物言いにピクリと身体が揺れるも、出来るだけ平静を装って話を進める。
「え?あ、問題ありません。それより私のせいでこの様な事に。申し訳ありません。」
「なに、心配は要らんよ。移転先の敷地も屯所も全部、西本願寺が持ってくれるそうだからな。」
「ほう、そりゃあすごい。よっぽど出て行って欲しいのですな。」
近藤さんの移転先の話を聞き、井上さんも安堵している様だ。
それが、新選組にとって三ヶ所目の屯所となる不動堂村屯所。
私達の新たな拠点となる場所だ。
こういった動きは、その時が近付いていることを酷く実感させられるものだ。
もう、覚悟を決めなければならない。