第16章 来訪者
「紛い物の原料が理性を乱したか。」
漆黒の髪は正反対の白銀に輝き、右に金色の、左に紅の瞳がぎらつく。
額には一角の角が生え、その姿はまさしく"鬼"
「千月!目ぇ覚ませ!」
目なら覚めてる。
力の制御が出来ないだけ。
「桜時!聞こえねえのか!」
聞こえてる。
聞こえているのに、体が言う事を聞いてくれない。
あの時と同じ様に。
「血の匂いで悪鬼に成り果てるとは。外来の鬼というのも哀れなものだ。」
誰でもいい。
何でもいい。
私を止めて。
もうあの悲劇を繰り返したくはない。
大切な人を目の前で失いたくない。
「けほっ…うっ…ゥシ、ナ、イタ、ク、ナィ」