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薄桜鬼 群青桜

第16章 来訪者


千姫達が帰ってから約半刻後、再び迫り来る4つの影。
いずれも強い殺気を放ち、目的を果たさんと嘲り笑う。

そう、先ほど千姫が教えてくれた。私の身柄を確保する為に。

「桜時君、奴らの狙いは君です。部屋から出ないようにと。」

部屋を出た私の前に島田さんが現れ言う。

「分かっています。だから尚更私が表に出なければ余計に犠牲が出ます。」

しかし人間が対等に相手を出来るほど鬼は甘くない。
それを分かっているから私は自分で対処しようと外へ出たのだ。

「本当にその通りだよ。千月さえ手に入れば特にする事もないしな。」

背後から忍び寄る影に気が付かなかった。島田さんの巨体がばたりと倒れる。
島田さんの姿が視界から外れると、代わりに目の前に立っていたのは、先ほども見た顔。しかし目的は同じであってもその方法が真逆。鬼の持つ圧倒的な力で押さえつけようとする残忍な颯太の姿が確かにそこにあった。

「こんなのが護衛のつもりかよ。全く、忠告してやったってのに。
さて千月、お前を捕らえる為なら多少傷がついても構わねえって事だし、俺ももう手段を選んではいられないんだ。
出来れば大人しく来てくれるのが有難いんだが。」

穏やかな顔で、飄々と余裕のある声色で。私もよく知る颯太の姿だ。でも何処からか強い威嚇を感じる。
その雰囲気だけで身体が硬直してしまうような、そんな感覚も感じる。

「生憎だが、私にも曲げられない目的がある。自分の安全だけを求めてそちらに身を寄せる事など出来ない。」

でも、その威圧感だけで考えを変えてしまうほど私は弱くない。
真っ直ぐ颯太を見つめ言う。

「やっぱそうだよな。仕方ないか。」

颯太は刀を抜く。月光を浴びて鈍い輝きを放つその刃を私に向けて。

ここで刀を交える事はどうしても避けられないと踏み、私も刀を抜く。

しかしその覚悟とは裏腹に、視界は歪む。鈍器で頭を思い切り殴られたような衝撃を錯覚しているような。

当然腕にも力が入らず、両手でなければ構えられなかった。

そんな状態の私が颯太に敵うわけがない。
呆気なく峰打ちを喰らい、自我を取り戻した時、私は颯太の腕に抱かれながら屯所の外に出ていた。
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