第15章 暗躍
屯所帰宅後、真っ直ぐ土方さんの元へ。
「伊東から信頼を得ることには成功した模様ですが、引き続き警戒を続けます。」
「斎藤には事情を伝えたのか。」
「はい。あくまでも伊東に伝えた表向きの事情ですが、元々尊王攘夷の志を持つ伊東なら薩摩と手を組む事も考えられると肯定されました。」
「報告ご苦労だった。今後は密書にて頼む。各所に監察型を配置するつもりだ。」
2つの場所を移動しているからこそ最初の掴みが大切だ。
初期の段階からそれなりの地位を獲得しておかねば、相手の警戒心を高めるだけになってしまう。
意識したつもりはなかったが素の状態でいる事で信頼は得られた。
「おそらくだが、お前を側近にしたのは、その実力を見込んで、他の隊士への抑止力にという事だろう。裏切ったら容赦はしないという見せしめに。」
そして新選組に間者として乗り込んでいる素振りを見せて、漏らしても良い情報だけを伝える。そうして実績を残す。
知られてはいけない。
衛士の連中は勿論、新選組にも。
今は孤独に耐えて、奮闘するしかない。
「土方さん、暫くしたら『千月は御陵衛士の間者の疑いがある』。そう幹部に伝えて警戒させて下さい。」
少しぐらい怪しまれていた方が衛士の連中は私が新選組の間者だとは思わないだろう。
目的を失わない為にも、最善を尽くすべきだ。
それがどんな方法でも。