第15章 暗躍
伊東から離れて斎藤さんの部屋へ。
彼もまた、新選組の間者であるために内部での動きを共有しておく必要があるのだ。
「ここではその姿にて活動するのだな。」
「はい。私の間者としての立場は中々複雑ですので。それに…。」
女性の姿をする。これは伊東の指示でもあるのだ。
あくまでも私は女として扱うらしい。
もちろん刀を交える時は私も参戦するが、女の姿をしているだけで戸惑いを見せる者もいる。その為だという。
「その、に、似合っていると思う…」
視線を泳がせながら外観の感想を言われる。
まさかそんな事を言われるとは思ってもみなかった。不意を突かれたようななんとも言えない感覚だ。
「現在薩摩に身を寄せる颯太と、今まで以上の接触が出来ればと思い、移籍を決意したのです。」
「なるほどな。尊王攘夷の思想を持つ伊東さんならば、いずれ薩摩とも関わりを持つだろうという推測か。」
情報共有と言っても、実際にここで話せる事にも限度がある。
他の連中に聞かれてはまずいからな。
「新選組で動きがあればすぐにお教えします。」
「ああ、頼む。」
言葉を選びつつ、斎藤さんに伝えるという行為も、この先増えていくだろう。