第15章 暗躍
これが私がここにいる経緯。御陵衛士にいる理由。
今は伊東の側近として絶えず動きを見張り続けている。
「しかしながら伊東さん、一つ疑問点があるのですが。」
「あら、なんですの?」
「何故私を伊東さんの側近に任命してくださったのですか。私は貴方に好かれる様な態度など取っていなかったと思いますが。」
そう。これだけはどうしても納得出来ないものだった。あからさまに敵意をむき出しにしていたにも関わらず御陵衛士に入れるどころか側近など。
その返答は想像していたものとは正反対の意外なものだった。
「人は信頼をかち得る為に自身を偽り媚びへつらうものですわ。実際、そうやってここに入隊した者もいます。
でも貴女は自分の目的を忘れず入隊を希望した。ありのままの姿でね。本当にそれが出来る人はそういません。
私は簡単に信念を曲げる事が無い人こそ信頼できますわ。だから私は貴女が気に入ったのです。」
そこまで考えて私を引き抜いていたのか。
私を女だと見抜いた一件もあり、全て見透かされていたのではないかという心配もあったが。
「それを言うなら私だって薩摩の話が出た時は驚きましたわ。まだ誰にも話していなかったというのに。」
意味ありげに私を見つめる伊東。
未だ真意が捉えられない御陵衛士の筆頭は一体どんな未来を思い描いているのだろうか。