第15章 暗躍
「貴女はこちらに来て正解だわ。本来女性である貴女はこうあるべきですもの。」
ここは五条橋東詰の長円寺。御陵衛士の屯所。
暫く着ていなかった女性物の着物を身にまとい、湯呑みを差し出しながら絶えず警戒し続ける私。
その警戒心に気付きながらももろともしない伊東。
「貴女は優秀な人材ですわ。誠実で謙虚で、それでいて大胆で。だからこそ新選組への間者を任せられる。
私達の邪魔をしない様、十分に見張っていてくださいね。」
「あくまでも私は自分の都合を優先する。勘違いだけはせぬようお気をつけを。」
「勿論わかっていますわ。ご忠告ありがとうございます。」
張り詰めた空気の中でうっすらと漂う湯気だけが時が流れている事を証拠付けていた。