第14章 覚悟
私は桜時の次期当主としての教育を受けてきた。
誰もが認め、恐れるような当主に仕立てようと。
私は鬼としてしか見られなかった。それが悲しいはずなのに、そんな感情とは裏腹に力は増すばかりだった。
でも、母だけは違った。
誰よりも厳しく私を育て上げたが、それ以上に私を私と見てくれていた。
私個人の感情を汲み取ってくれていたんだ。
それに母は命令というものをして来なかった。何をするにも命令という形を取らず、あくまで個人の判断に任せる方針を取っていた。言葉で縛り付けることはしなかった。
いつしか私は母の教えのみを受けるようになっていた。
厳しいはずなのに嬉しく、怖いはずなのに優しく、私はそれが当たり前のように感じていた。
しかし母は、私に当主としての教えを全て終えると死んだ。死刑だった。
私を産む以前に禁忌を犯していたらしい。
当主を継いだらすぐ死ぬという約束だったんだと。
最後、母が残した言葉、それは母からの最初で最後の命令だった。どんな時も命令をして来なかった母がだ。
その命令はずっと残っている。今もこれからも変わらない。
「千月、何があっても颯太を守りなさい。私の大切な息子を。守りなさい。」