第13章 隠密
外の通りを歩く私と土方さん。
慣れないぽっくり下駄を履いているせいか、慎重に歩いてしまう為、土方さんからどんどん離れていってしまう。
土方「お前でもそんな慣れないもん履くと随分ゆっくりになるんだな。」
千月「当たり前です。一体私をなんだと思っているんですか。」
土方「いや、悪いな。そんな格好してんのに、喋り方がいつもと変わんねぇと、拍子抜けしちまうじゃねぇか。」
千月「そういうものですか。やはり多少なりとも廓言葉を学んでおくべきだったのでしょうか。」
土方「何言ってやがる。行くぞ。」
そして私の手首を掴んで半分無理矢理に連れて行く。
土方さんとこうしてゆっくり話したのは久しぶりな気がするな。
番頭「ん?ちょ、ちょっと待ちなはれ。そこのお兄はん!」
土方「ん?」
番頭「芸妓連れて何処行きはるつもりです?」
土方「あ、いや、こいつは芸妓じゃねぇんだ。」
番頭「え?何言うてはるんです。どこをどう見ても立派な島原の芸妓ですやろ。」
土方「あ、いや違う。これには訳があるんだ。」
番頭「そりゃ、男と女には皆深い訳がありますやろけど…芸妓惹かせる言うんやったらきちんと手順を踏んでもらわんと。」