第12章 目的
え…
千月「やめっ…」
いきなりこんな事をされて抵抗しないはずがない。
ただ運が悪い事に今は武器を一切持っていない。おまけに芸妓姿だ。身動きが取りづらい。
風間「やはり俺の目に狂いはなかった。その姿、我が妻に相応しい。」
妻⁉︎
風間が発した謎の言葉に驚愕しながらも、必死にもがいて逃れようとする。
しかしもがけばもがくほど、離れようとすればするほどその力の強さは増していく。
風間「この俺が褒めてやっているのだ。光栄に思え。」
千月「いやっ!やめて…」
ついに逃れる術を失い、再び近づいてくる風間の顔に怯え強く目を瞑った。
その時だった。
暗闇の中で声がした。
颯太「何やってんだよ!離れろよ!」
え、颯太?
鈍い音とともに体が自由になり、ゆっくりと目を開けると、私から少し離れた左側で倒れている風間の姿。
千月「颯太、何故ここに…」
颯太「風間さんと一緒に藩の命令で来たんだけどさ、途中で抜けてどっか行くから探してたんだよ。まさか、こんなところで千月を襲ってるとは思わなかった。」
風間に目を向けながら呆れ顔で説明してくれた。
風間「貴様…」
颯太「風間さん、勘違いしないでくれよ?確かに千月を嫁に迎えたい風間さんと、千月を守りたい俺とでやる事は一致したけど、俺は千月を風間さんなんかに渡す気は全く無いんだからな!」
千月「颯太、さっきから話がよくわからないんだが。嫁ってどういう事だ。」
颯太「その話は後だ。お前は一旦ここから離れとけ。」
確かにこれ以上の騒ぎになるのはまずい。
知りたい事もあったがこの場は颯太に任せて私は離れよう。
去り際、颯太が言ってくれた言葉は単純に嬉しかった。
颯太「お前、綺麗だな。似合ってるよ、その格好。」
同時に、今私はただの女に成り下がっていたんだと痛感した。