第12章 目的
何も言い返す言葉がない。
廓言葉の使えない芸妓は阿呆…か。
やはり私に芸妓など務まらなかったか。
風間「さて、茶番は終わりだ。桜時千月。」
ここで名指しをしてくるか。
確かに、今の私にとってはありがたいものだったかもな。
正直、もう痺れを切らして自分から名乗ってしまうところだった。
千月「安心したぞ風間。まさか姿を変えただけで鬼だと判別出来ないほど落ちぶれたのかと思った。」
風間「この俺が落ちぶれただと?言ってくれる。お前こそ人間の命なんぞに真剣に撤するなど、鬼としての誇りを忘れたか。」
千月「私のいた世界には鬼の誇りなど等に忘れられたものでな。」
強い視線をぶつけ合う私と風間。
ひんやり冷たい秋風が襖の隙間から入ってくる。
風間「そう警戒するな。今日の目的はお前ではない。新選組屯所を襲撃する会議の警護の為だ。」
千月「それを新選組隊士である私の前で話すのだな。」
風間「俺の知ったことではない。所詮は人間のお遊び。そこまで付き合う義理はない。」