第2章 浅葱色
たわいもない会話が続く中、襖が開く。
近藤「みんな、待たせてすまなかったな。桜時くんも。改めて新選組局長の近藤勇だ。よろしく頼む。こちらは総長の山南くん。で、こっちは副長のトシ…土方くんで…」
土方「近藤さん、なんで丁寧に紹介しちまってるんだあんた…」
沖田「でも僕らほとんど自己紹介終わってますよ。」
土方さんはやれやれといった様子で近藤さんを遮る。
山南「音沙汰ない方ばかりで申し訳ありません。しかし皆悪い方ではありませんのでご安心ください。」
永倉「なーに言ってんだ山南さん、あんたが一番おっかないって。」
ハハハとつかの間の楽しげな雰囲気。
しかし私には理解し難いものだ。
近藤「さて、本題に入ろうか。斎藤くん、報告を頼む。」
斎藤「昨晩彼と隊士が遭遇、隊士が刀を抜いたため斬り合いとなったようですが、彼が全て斬り倒した様だと思われます。」
土方「その思われるってのは、総司も斎藤もその現場に居合わせていなかった、と言うことで有っているな。」
斎藤「その通りです。我々が到着した時には既に片付いており、彼がその場から立ち去ろうとした際に接触しました。」
なるほどな。と土方さんが一言。
永倉「ってことは、失敗した隊士3人相手に切り傷一つなくこいつだけで始末したってことか?それは流石に信用出来ねえな。」
近藤「桜時くん、君からもその時の様子を聞かせてくれるかな?」
私は一瞬留まった。
ここで話をしなければまず殺されると見て間違いないだろう。幕末とはそういう世の中だろう。
しかし、未来から来たなどと言ってそう簡単に信用されるとも思えん。
そもそも未来から来たという話は私とて完全には理解出来ていない。
一体どうすれば。
原田「桜時くんよお、黙っちまったって君の立場が変わるわけじゃねえんだし、どんなことにせよ話しちまった方がいいんじゃねぇか?」
そうか。ここで殺されるわけにはいかん。
かといって嘘を言ってごまかせる相手でもない。
ここは実体験をそのまま話すのが妥当か。
覚悟を決めて話そうとする。
…が、その前に。
千月「話す前に一つ言わせていただきたい。昨晩の事情については私も完全には把握していない。矛盾点や信用出来ぬ点もあるだろうがまずは一通り聞いてほしい。そして、」
「このことは外部に漏らさないでいただきたい。」