第12章 目的
とりあえず平助を中へ招き入れ、酌をした。
平助は相変わらず呑んだくれて。酔ったのか、少し頬を赤らめていた。
しかし場に流れるのは長く、重く、空気の悪い沈黙。
それをなんとか破ろうとして放った言葉は、ずっと言いたかった事だった。
千月「…先日はすまなかった。」
なんの予兆もなくいきなり謝られ動揺したのだろうな。かなり驚かれた。
千月「でも、私は颯太に似ているからという理由だけで平助を助けたわけではない。
確かに最初はそんな認識だったし、今だって平助を見ていると颯太の事を思い出す。でもな、平助を仲間だと思ったから助けたんだ。
私は守られる側にいたことはない。だから大切なものは自分で守る。だから新選組も、颯太も平助も守る。
あの時はな、それが咄嗟に出てこなかったんだ。悪かったと思っている。」
私が狂った日。
平助は自分の血をくれると言った。
でもそれを拒んだのは颯太を傷つけている様に錯覚する以上に、新選組を…平助を傷つける事を恐れての事だったと思う。
新選組に尽くしたいと気付けたのはその後の出来事だった。
だから言えなかった。
平助だって信頼に足る仲間だという事を。
千月「言い訳…だな。」
平助「いや、俺もずっと謝りたかったんだ。お前の気持ちも考えずにただ止めてさ。悪かったな。」
前からそう思っていたのか、それとも私の考えを知ったからなのか。平助から謝ってもらえるとは思っていなかったから意外だった。
どちらにしても、きちんと話せてよかった。