第11章 本来
君菊「皆はん、おまっとはんどす。」
そして花魁姿に変貌した私はみんなの前に姿を現した。
反応はそれぞれ違ったが、みんなの反応を見る限りでは見た目はちゃんと化けられているようだった。
土方「見違えたな。」
沖田「これなら看破される心配はなさそうだね。」
千月「それならいいのだが…」
ただ、見た目はどうであれ廓言葉が出ないのは不審がられるのではないかと心配だ。
舞や三味線もそこまで出来るわけではない。
君菊「お客はんにつく時はお酌だけで結構どすえ。」
千月「はい…。」
永倉「そんだけの別嬪さんなら酌だけで映えるって。」
沖田「新八さん、もしかして見惚れてる?」
永倉「馬鹿野郎。照れるじゃねぇかよ。」
にしても、女の姿をしたのはいつ振りだろうか。
性に関わらず私はただの人殺しとして教えを受け、稽古を受け。人間を慕う度に叱りを受け。
自分が女であることを忘れるような日常が普通だと思っていた。
でも違った。
これが私の本来あるべき姿…。
結局私は内偵としてしばらく角屋を出入りする事に決まった。
しかし私一人では対処出来ない事もあるということで、客として見張りを置くことになった。
騒ぎになったら直ぐに呼べ、お前はあくまでも芸妓として振舞えと土方さんからは厳重に指導を受けた。