第11章 本来
千月「私の事は誰からの情報なのですか。」
千姫「貴女と共にこことは違う世界から来たと言う少年から。名前は知らないけど、たまに情報交換をしているの。」
颯太…か。
颯太なりにこの幕末に類似した世界の事を知ろうと動いているのか。
その後はたわいもない話を交わした。
ここに来てからはもちろんだが、元の場所にいた時も女の子と話を交わすことはなかった。
だからだろうか。すごく楽しく感じた。
人と接する事が楽しいと感じる。
その事に気付けたのはここに来たからだと思う。
千姫「新選組の評判ってあんまりだけど、いい人もいるのね。あの背の高い人、最近悩んでるみたいだから励ましてやってくれって。内緒にして欲しいって言われてたんだけどこっそり教えておくね。」
新選組の人達も互いを尊重し、認め合って成長していく。
ここに来た意味を掴みかけた瞬間だったかもしれないな。
千姫「近々また会いに行くね。貴女に会わせたい子がいるの。」
千月「わかりました。ではまた。」
会わせたい子、か。
どんな子なのだろうか。
その人物がこの先深く関わっていく者だと私が知るのはもうすぐの事だった。
そして、そんな楽しさはすぐに終わりを告げた。
土方「家茂公が亡くなられた…だと?」
そろそろだと思っていたが、こんなに唐突だったとは。
この後間もなく禁門の変に端を発した長州征伐は幕府軍の大敗北という衝撃的な結末で幕を閉じた。
260年間、揺らぐことの無かった大樹が軋み始めた瞬間だった。
そしてこの先新選組がどうなるのかを考えると、私は不安でたまらなくなった。