第11章 本来
千月「原田さん、巡察お疲れ様です。」
慶応元年 夏。
暑さが身に染みるある日の事だった。
原田「おう。お前お千って知ってるだろ?お前に話があるんだとよ。」
原田さんにそう言われ連れてこられたのは甘味処だった。
そこには先日助けた千という女性の姿が。
千姫「これは先日のお礼。さ、食べて食べて。ここのお団子すごく美味しいのよ!」
千月「いただきます。」
そう言われ一口。
上品な甘さが広がって美味だった。
自然と口元がほころんでいくのがわかった。
千姫「その様子だと気に入ってもらえたみたいね!良かった。私あの後千月様の事ずっと気になってたのよ。」
やはり様付けか。
知りたいことが山積みの今、些細なことでもはっきりさせておきたかった私は単刀直入に聞いてみた。
千月「千姫、どうして私を様付けで呼ぶのですか?やはり私の事を知っているのでは。」
千姫「うん。まあそうです。貴女も私の事、知っているみたいですね。」
そう。先日颯太が訪れた時に聞いていたのだ。
京の鬼を統べる八瀬の姫。鈴鹿御前の千姫の存在を。