第10章 二人
颯太「まさか簡単に承諾されるとは思ってなかったよ。この間はあんな強引なことしちまったし。悪かったな。」
誰もいない静かな場所へ移動した途端、あの頃のような懐かしい笑い顔を作って私を見る颯太。
千月「良かった。颯太が変わっていなくて。」
颯太「変わったって…。んーまあそうだよな。あんな豹変したら流石にビビるよな。正直あの時はお前を守ろうと必死になり過ぎてた。お前はそこまで弱くねえのにな。」
親しげに始まった会話。
今はお互い敵対関係にある団体に属しているが、それでも互いに対する思いは変わっていなかったようで良かった。
千月「余談はここまでにしておこう。」
颯太「そうだな。本題を伝えねぇと。
俺が今日ここにいるのはな、結構重要な事だ。この場所について。」
千月「この場所…新選組の事か。」
颯太「違う。新選組だけじゃない。この世界の事だ。」
世界…。
規模の大きすぎる事項。
一体颯太はこの時代でどんな情報を得たというんだ。
千月「そんな規模の話とはどういうことなんだ。」
風が吹き付ける音だけが辺りを包んで。
その中で颯太は落ち着いた様子で私に告げる。
颯太「ここは幕末だけど幕末じゃない。似てるけど違う。
俺たちは時を渡ってきたんじゃない。全く違う。いわゆる"異世界"に来ちまったんだよ。」