第10章 二人
そして私と沖田は互いに向き合い、手合わせを始めた。
何度も交わる木刀。
その力の加減が出会った時と比べ弱く感じた。
そしてその刀を振り払うことの出来ない私。
千月「互いに腕が落ちた…か。」
沖田「どうだろうね。互角に渡り合ってるって事は、腕が鈍ったのは君だけかもしれないよ。」
初めて沖田と戦ったあの日。
私はなんて弱い人間なんだろうと見下していた。
容易に避けられる太刀筋も、隙だらけに見えた体も、これが人間の限界なんだろう。
そう思っていた。
その間違いに気づいたのはいつだったのだろうか。
情なんて信じていなかった私が、颯太以外の者を仲間だと思ったのはいつだったんだろうか。
間違いに気づいた事に気づいていなかった。
私は、とっくに新選組の隊士だったんだ。
そう思うと、なんだか普段以上の力が出せるような。
仲間の中で私はより強くなれたんだと思うと嬉しかった。
千月「勝負あり…だな。」
気づけば私は沖田の首元に木刀の先を向けていた。