第9章 吸血鬼
痛い。
苦しい。
辛い。
自分の血なんてその場凌ぎぐらいにしかならないのはわかっているが、それ以外に方法が見つからない。
平助「お前!何やってんだよ!血が欲しいなら俺のをくれてやる!だからもう止めろ!」
腕から滴る血を眺めながら平助は言う。
でも、それこそ無理だ。
誰かの血を飲むなんて、平助の血を飲むなんて出来ない。
颯太の血を飲んでるみたいだから。
颯太を犠牲にして生きているみたいだから。
そして私は腕から牙を抜いた。
何とか収まったようだったから。
噛み付いた跡が塞がるのを確認して腕を下ろすと、平助に無理矢理作った笑みを見せた。
千月「見られたくなかった。だから離れていて欲しかった。」
平助「なんでこんなに酷いって言わなかった。」
千月「言わなかったんじゃない。ここまで酷い症状は私も初めてだったんだ。だからどうすればいいのかわからなかった。」
平助「だったら俺の血を飲めばよかったじゃねぇか!」
千月「それは無理だ!…颯太を犠牲にしているみたいだから。」
言い争いの中でつい私は颯太の名を出してしまった。
さすがに平助も怒りが溜まってきたようだった。
平助「じゃあ、俺はお前にとって颯太の代わりなんだな。確かに似てるのは認めるよ。でも俺は颯太じゃねえ。新選組の藤堂平助だ。いい加減、俺と颯太を重ねるの止めろよ。」
千月「…悪かった。」
今はそれだけしか言えなかった。
ただ一つ確実なことを言うならば、今この時私達の間に亀裂が入ったということだ。