第9章 吸血鬼
近藤さんから松本先生とお話できるようにと頼んで下さったおかげでこの日の夕方、お話する事が出来た。
松本「桜時千月君だったかな?やっと話せたね。」
千月「お忙しい中わざわざありがとうございます。近藤さんも、お話を通してくださってありがとうございました。」
松本「大まかな事情は近藤さんから聞いているよ。苦労してるみたいだな。」
松本先生から聞いたのは変若水の事。
雪村綱道という蘭方医が幕命を受けて作ったそうだ。
しかしまだ改良中にある為に羅刹となったものは自我を失い、血を求めて無差別に人を襲う事があったらしい。
たとえ望んでいなくとも幕命は受けざるを得ない。
それでも良心があったからこそここを去ったのではないかと松本先生は言った。
現在綱道氏の行方は追っているそうだがまだ検討もついていないらしい。
松本「私の知る変若水についてはこれが全てだ。では、私の方からも君の診断結果をお教えしよう。君は気管支喘息を持っている。」
千月「だと思いました。」
松本「知っていたのか。なら話は早い。今すぐ新選組から離れなさい。」
千月「それは出来ません。喘息の発作が現れる原因は知っています。それでも私にはここで成すべきことがあると思っています。」
喘息の発作は治癒をする事で起こる。治癒の回数が増える毎にその症状は重くなっていくこともわかっている。
何もしなくても軽い発作が起こるようになっている。
吸血衝動も起こりやすくなっている。
いつ誰を傷つけるかわからない。
どこで何を失うかわからない。
千月「わかったんだ。私は新選組を出たらただ守られるだけの女に成り下がると。それでは駄目なんだ。私は守る側に居続けなければならない。」
風間達に襲われてわかったんだ。
颯太に会ってわかったんだ。
私は守られるだけでは駄目だと。