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カルテ~若き医師達の奮闘記~1・希望編

第2章 #1 特別研修医


夏真っ盛りのある日、日曜日だというのにその電車に乗っていた少女は制服を着ていた。

髪はポニーテールに淡い黄色のシュシュ、制服は知的な雰囲気を出した上品で清楚なワンピースに大きな赤色のリボンがついたもので、地元で知らない者はいないほどその存在感は大きい。

少女は耳にイヤホンをつけながらタブレットを操作していた。決して音楽を聞きながらいじくっているのではない。イヤホンから流れるのは、ネイティブな英会話で、タブレットでは授業の予習をしているのだ。

「次は、菊丘、きくおかー」

少女は電光掲示板を確認し、おもむろに降りる支度をする。

そして扉の開いた電車を降り、改札口を出ると、そこには少女と同じ制服が載っている広告板がでかでかと建っていた。

-陽南大学附属中学校 医療コース開設!-

少女はその横をただ通り過ぎた。

(今日はゆっくり歩けるかな)

少女がペースを落としたそのときだった。

バタンッー。

振り向くとそこでは、30代の女性が倒れていた。
連れの男性だろうか、彼は何が起きたか分からず叫んだ。

「おい!どうしたんだ!おい!」

少女はすぐさま女性に近づき、呼吸と脈を確かめた。

呼吸無し。頭骨動脈が触れない。

心肺停止。

少女は、心臓マッサージを開始した。

「すみません、救急車呼んで下さい」

少女は男性に、指示をした。しかし、男性は身内が倒れたショックからか、動けなかった。

「救急車は俺が呼んだ」

少女が顔を上げると、そこには見慣れた男子の制服を着た少年が荷物を置きながら言った。

(陽南の制服…。それに赤のネクタイ…同学年か…)

「手伝ってくれる?」

少女は一か八かその少年に尋ねた。

「当たり前だ」

そう言うと、彼は近くにいた駅員に氷のう5個と会議用の長机を持って来るように指示を出した。

「それと、ここにいる人で体格の良い方は女性を移動させるので手伝って下さい、あとシーツの様なものを持っていたら貸してください」

ウジャウジャといた野次馬達に少年は的確に指示を出す。そして彼は少女に向きを変え、

「心臓マッサージは俺が変わる。お前は他に疾患が無いか見てくれ」

「分かった」

少女は彼が心臓マッサージを始めるのを確認してその手を抜いた。
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