第20章 剥がれ落ちた花びらが舞う
それから丸井くんは
ブツブツと呟くこともしなくなり
ただ無言のまま
私の手首を引っ張る
つられて私も
何話したりとかしないけど
変に気まずい
「…あ、」
「?」
「丸井。遅かったね」
手を組んで冷たく笑いながら
待ち構えていただろう幸村くん
どこの王様だよ
その雰囲気
風で髪がすこしなびいて
より神秘的な綺麗さが溢れてる
それが
よけいに怖い
「こいつ、頬
爪で、血が!跡が!」
「丸井落ち着いて。
…如月さんその傷は
なんでついたのかな?」
「こ、転けたから」
「え?転けて爪の跡がつくの?
それっておかしいだろ?」
言えないじゃん
西崎さんに
やられました、なんて
どうせ信じないだろうし
よけい疑われて終わりだ
「さっきまで
そんな傷なかったじゃん」
「だから、転けて…!」
「だから、なんで転けて
爪の跡がつくんだよ」
「わからないよ…」
あくまでも口は割らない
そうすれば西崎さんに怯えてる感
出るからね かなり
いじめられるのが怖けりゃ
人間、口なんて硬いもの
「何も分からないとでも
思ってるの?俺が?」
「幸村くん、やっぱ…!」
「一応、蓮二達にも聞こう。
決めつけるのはそれからだ」
じゃあ俺呼んでくる!と
丸井くんは行ってしまった
ちょ、やめてよ
今この状態で幸村くんと
二人きりとか
別に恐怖とか感じてない
でも嫌だ
この人、好きじゃないから
「あくまで言わない気?」
「…言ってどうなるの」
「俺達が君を信じるかもしれない」
「かも、でしょ?
そんなあやふやな言葉は信用に値しないね」
フッと鼻で笑えば
幸村くんの眉がぴくりと動いた
挑戦的で生意気な
言葉を選んだのはわざと
プライドの高い君だから
こんな言葉すら許せないんじゃない?
「それがお前の本性?」
「何が言いたいのか
よく分からないな」
「全く、君が何を思っているか
俺には想像も及ばない」
「人の考えが分かれば
誰も苦労なんてしないさ」
薄く出た笑いは
お互いを嘲笑するようだった